さよならのとき
近所に住んでいた小学5年生の男の子がお引越しをしました
人懐っこくて 澄んだ目でこちらをまっすぐに見つめてくるような子でした
いつもいろんな友達と一緒に 近所の空き地で日が暮れるまで遊んでいました
うちの息子もたくさん遊んでもらっていました
その子が お父さんのお仕事の関係で遠くの街に引越しをすることになったのです
そしてついにお別れの日はやってきました
いつもにも増してたくさんの友達が集まっていました
出発の時間を間近に控えながら
男の子達はいつものように元気いっぱいにかけまわり 遊んでいました
それは楽しそうに
お別れなんてないんじゃないかと思えるくらいに
あるいは
お別れの現実を考えないようにしているかのように
いつもどおりに遊んでいました
でも そのときはやってきました
「さぁ、いくぞ」というお父さんの声に
彼が何度か気づかないフリをしていたのをわたしは見ていました
だけどその声が聞こえている証拠に
彼は友達と戯れながら
なんどもあふれてくる涙を拭っているのでした
そして最後は涙で顔をくしゃくしゃにしながら
車に乗り込みました
本当にお別れのときがきました
じゃあな 元気でな
さよならの言葉と握手に囲まれて
車は出発しました
出発した車を追いかけた男の子達は
まだか細い腕を伸ばし 握手をしながら
最後の曲がり角で最後のお別れをしたのでした
見送るせつなさと
見送られるせつなさが
交じり合った夕暮れでした

スポンサーサイト