人魚姫

「人魚姫は、美しい声と引き換えに人間の姿になって、王子様と再会しました」
***
Uちゃんは、全身の筋力がだんだんと衰えていってしまう病気です。
呼吸を確保するための機械を、生まれて1年になる前にのどにつけました。
お医者さんは言いました。
「手術をすることで、命の安全は大きくなります。しかしこの子は、言葉を発することはもう、難しいでしょう」
***
今、3歳を過ぎたUちゃんは 初めて会った私に
「こんにちは」と言ってくれました。
口は動かないけれど、ちゃんと、ちゃんと聞こえる声で
お話してくれました。
物語の中の人魚姫は、言葉を失ったままだったけれど
Uちゃんは言葉を失ったままではなかったのです。
物語の中のお姫様は美しいけれど
現実に生きている私たち人間も
とっても強くて美しい
人間の可能性ってなんてすごいのでしょう。
想いが なにかを変える、ということが現実に起こるということ。
私は、大切な、大切なことを、Uちゃんから教わりました。
Uちゃん、ありがとうね。
Uちゃんは、「おかあさん」「おかあさん」と、何度も何度も呼んでいました。
大好きなお母さんがそばに来てくれると、嬉しくて表情もなんだか違います。
そしてもうすぐUちゃんのうちに、新しいいのちが生まれます。
Uちゃんの目から時々溢れてこぼれる涙には、
なんだかUちゃんの想いが、
言葉になりきらない想いがたくさん詰まっているような気がして、
私も言葉にできない気持ちを心の中でかみしめながら、
シャッターを切っていたのでした。

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